第82回ライブ(11/8)
「あなたが作る!映画づくりワークショップ」
ゲスト:杉田協士さん


最高の居場所 第82回ライブ 2015.11.08(日)
渋谷区文化総合センター:11:00〜17:00
「あなたが作る!映画づくりワークショップ」
参加者:18名(内 初参加5人)

「映画においてのセリフは、とても大きい意味を持つ。シーンを動かす。」
これは今回のプレゼンテーターである、映画監督 杉田さんの言葉です。

《ゲストプロフィール》
杉田協士(すぎた きょうし)1977年、東京生まれ。映画監督・写真家・小説家。2012年に『ひとつの歌』で長編映画デビュー。同作は第24回東京国際映画祭・日本映画「ある視点」部門に正式出品。同年、写真短歌集(共著)『歌 ロングロングショートソングロング』(雷鳥社)に写真家として参加。現在、新作映画・小説『あしたの花』を準備中。
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今回の映画作りワークショップでは、
・「ある人に言いたくても言えなかった一言」
・「時々ふっと思い出すあの一言」
というテーマをまず設定し、そのテーマ沿ったセリフを書き出して、
そのセリフを元となったシーンを思い出した後に、
セリフを書いた人が配役を決めて撮影を行う、といった手順で撮影を行いました。

まずは、杉田さんから全体の流れを説明していただいた後、
18名で4つのチームに分かれて早めのランチを取りながら、
個人個人でシーンを考えたり、映し方を考えたり、ロケハンしたりしながら、
チームごとにそれぞれ撮影を開始しました。

実際撮影を開始してみると、撮影をするためのカメラアングルを決めるにしても苦労する人がほとんど。
自分の考えるテーマを人に伝えるためには、どのような視点から、どのようなアングルで撮影すればよいのか・・・
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18人がそれぞれ創意工夫をしながら、15:00前には「18本の映画」が出来上がりました。
完成した全18本の映画を18人全員で鑑賞し、最後に杉田さんから解説を頂きました。

以下は、杉田さんからいただいた解説の抜粋です。

・カメラは何かを映すと他の何かを映せなくなる。思い出している過去の時間とは
 また別の時間が流れる。演者が視線を外さない、それが存在感を現している。
 迷っている。どう見せようか、でなく、どう見たいか。
 下手をすると演者の意図の方が見えてしまう。
 どういう風に反応するか、に、その人自身の表現が出る。
 その人の体に全てがあるのではなく、その人を含めた周りに場がある。

・人同士の関係性って、たたずまいに現れる。

・その人の性格が映像に現れる。主人公に他者の手が入った瞬間に、カメラがふっと引く。
 カメラは先回りが出来ない。カメラが何かを生み出すことはできない。
 必死に追いついていくことしか出来ない。
 そのカメラがいま実際に起きていることを映し出している。

・人との関係性は距離に現れる、それが見ている人にも伝わる。

・自分の記憶なのに、カメラとの間にとても距離がある。冷静。
 いとこのお姉さんが来てくれてとてもうれしかった。その気持ちが残っている。
 記憶に対して、自分がどのくらいの距離で接するか、それも映画のおもしろさ。
 その時の主人公には見えない表情なのに、その時のお姉さんが撮れる。
 映画にしか撮れないシーン。

・必要なシーンが、過不足なくしっかりと撮れている。
 役の中のせりふに、観客の気持ちが全員のっかる。

・背中で、家族同士の関係性を現す。家族ならでは。
 お母さんが、背中越しにちらっと見る。当時の自分には見えない視点。映像ならでは。
 再現だけど、再現ではない。追体験でどこまで伝わるかだ。

・映画は、時折つくり手本人の意図を超える。
 演者が、二カッと笑い、またすっと素に戻る。怖い。
 映し手の中で、この思い出がまだよくわかっていないのかも。
 映し手は、このシーンに意味をつけたいのだろう。あと10年経ってもう一度撮っても
 いいかも。謎はなぞのままに撮る。

・表現とは、あきらめをつけることに近い。手放す。自分ができることはこのくらい。
 でも、言われたこと、やるべきことはきちんとやる。
 自分が何かをできると思うと失敗する。
「がんばろう!」という意識が体に、表現の中に出てしまう。
 
・不思議な寄り方をしていた。それが、よかった。その人それぞれの表現は、
 すでにその人が持っている。自分にとっての正解はその人にしかない。

それでは、作品の一部をご覧ください!!

バタヤンさんの作品


ほづみさんの作品

あおこさんの作品

 
18本の映画を全員で鑑賞し、杉田さんから解説していただいた後、
全体の振り返りを行いました。以下は、杉田さんからのコメントです。

「自己満足はよくない!」という意見があるが、
「自分がちゃんと興味持って行くものを 撮る」ことが大事。
自分が興味のないものを撮っても意味がない。
自己を満足させられなくて、観客を満足させられるのか。

みんなを撮ろう、カメラにおさめようとしても、つまらなくなるだけ。
自分の心が動いたものを、その距離感で撮る。

このフレームの中をちゃんと撮れば、その周囲がその中に映りこむ。
ここが黒だと、周りも白く映る。きちんと黒く撮ることが大事。雑にしない、丁寧に撮る。
1人で出来ることは限られる。自分ひとりで全ての責任を負わなくていい。

最後に、Q&Aを行い、解散となりました。以下はQ&Aの抜粋です。

Q:チームで何かをつくるとき、1人で行ける場合があるが、チームではどうする?
A:一般的に映画の世界では、ある人がカメラって決まったら、その人に全てを任せる。
監督であっても。ある映画監督では、カメラが代わるたびに撮り方が変わる。
そういう主義か。変えない監督もいる。スタッフひとりひとりが、自身と誇りを持つ。
監督の意図を超える。例えば、編集者は現場に行かない。別の感情や思いが湧き上がってしまうため。
残った映像だけがすべてということで、そこに集中することが多い。
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以上、11月ライブ事務局は、高田天朗(てんろう)、水野公美(くみ)、深田浩稔(えが)、川端健一(バタヤン)、久保青子(あおこ)の5名でした!!